第5回は、折って、切って、開いてつくる切り紙で、様々な世界を表現し続ける
切り紙作家の矢口加奈子さんにクローズアップ!


Creator Information
NAME : 矢口加奈子(やぐちかなこ)
OFFICIAL SITE : KANAKO YAGUCHI KIRIGAMI WORKS[カナコヤグチ キリガミワークス]
2008.01.18(金)~ 01.30(水) 三軒茶屋のキャロットタワー3階にて個展を開催します。


切り紙作家としてご活躍されている矢口加奈子さん。現在に至る経緯と、現在の主な活動をご紹介ください。
 切り紙を始めたのは、時間があった学生の時に、なんとなく紙を切っていたのがきっかけです。たまたま紙を折って、切って、開いてみて、おもしろいかも!これはいけそう!と思い、今まで続けています。切り紙というのは、様々な媒体に落とし込める可能性があるので、まだ手探りの部分も多くありますが、それらを楽しみながら様々な展開をさらに考えていきたいと思っています。
 現在の活動ですが、切り紙がメインであれば何でもやっています。個展が主な活動ですが、切り紙を使ってこういう表現ができないか?などの依頼があれば、私なりの答えを切り紙を使って提案させていただきます。例えば、広告やカタログ、季刊誌の表紙など、または浴衣の絵柄なども手がけています。
 




20歳を過ぎたころから、切り紙の制作活動をはじめたということですが、その道に入ったきっかけなどあれば、教えていただけますか?
 父親が設計の仕事をしていたので設計などに興味を持っていました。学生時代は空間デザインの勉強をしていたのですが、あまり自分には向いていないと感じていました。そんな中、工房で木を切ったり、何かつくったり、手遊びをしているうちにたまたま生まれたのが切り紙なので、はっきりとしたきっかけがあったわけではありません。切り紙が仕事になったのも、自然な成り行きでした。色々な方のアドバイスを聞き、良いと思うものを選んでいくうちに、道が見えてきたという感じでした。



現在は数多くの個展や本の出版など、精力的にご活躍のようですが、活動が軌道に乗るまでに、努力した点や、苦労した事がありましたらお聞かせください。
 体力的にもそうですが、精神的にも苦労はいろいろありました。切り紙をもっと知ってもらおうと、営業的なこともしてみましたが、私には向いていなくて、泣いて帰ってきたこともあります。また、友達と二人で出展した最初のデザインフェスタでは、作品は売れないし、自分でも何をしたいのかわからないまま進めてしまった事もあり、心身共にボロボロになってしまって悔しい思いをしました。でも、そんな悔しい気持ちがあったからこそ、今の自分があるように思います。




2007年は本を3冊出版されたそうですが、本を出版することにより、何か変化はありましたか?
 本を出版するまでは、「今まで以上になるにはどうしたらいいのだろう?」とよく考えていました。人と人とのつながりでよりよい環境へ移行できないか色々試行錯誤しましたが、現状は変わらず、はがゆく思っていました。
最初はハウツー本ということで、自分へのメリットを見いだせず、出版も迷いましたが、「知ってもらう」ということに意味があるのではと考えを改め、出版にいたりました。
 出版後、沢山の方に切り紙作家というものを知っていただいたからこそ、今まででは実現できなかったことが実現できたり、CMやテレビなど、お仕事の幅が広がりました。このことで「知ってもらう」ということがとても重要なことなのだと思うようになりましたね。

 



矢口さんの制作活動全般において、心がけていることやこだわっていることがあれば教えてください。
 私が制作する切り紙は、折って、切って、開くがベースになっているので、“切り絵“とは、一線を画したいと思っています。具体的に人や物を思い浮かべて制作はしませんが、ホームページのタイトルでもある”歓びのかたち“を、大きい大前提として制作しています。どこかの誰かが、私が作るもので少しでも幸せを感じてくださると嬉しいですね。



切り紙というと、紙とはさみが、必要だと思います。切り紙の制作に使われるこのような道具には、こだわりはありますか?また、通常どのような環境で、制作活動を行っているのですか?
 道具はハサミ1本だけです。小学校の時のお裁縫箱に入っていたハサミをずっと愛用しています。最近やっと2本目を手に入れました。ハサミだけで、細かいところもすべて切るのですが、切りづらい所も今ではすっかり慣れましたね。
 紙は、折り紙がベストです。もっと細かく折りたい時は、薄い紙を使ったりもします。新聞、雑誌やチラシも使います。環境はあまり問わず、ハサミ1本もっていればどこでもできますね。家でコツコツと作業することが好きで、普段は家をアトリエとして作業しています。


切り紙の制作で、難しいところはどこですか?下書きはするのですか?また、紙だけの枠に収まらず、様々なものに表現の形を落とし込んでいるようですが、たとえばTシャツなど、素材として布を使うときの制作過程を簡単に教えてください。布は染めるところからはじめるのですか?
 切り紙で立体を表現するのは苦労します。切ってから開いたところの良さ、折り目などをうまく出すのが難しいです。下書きはしないで感覚のまま切っています。布を使った作品などは、布を織るところからはしませんが、布を買ってくるところから自分ではじめます。プリントする時は、型を作り、布の上に型を重ね、その上から染料を含ませた布でたたき、柄を描いていきます。またバッグなどは、切り紙したものを布に転写して、それをハサミで切り抜き、一つ一つバッグに縫い付けていきます。ジュエリーは外注していますが、外注とは言っても、ひとりのアーティストさんが一つ一つ、つくっています。

 


今後、挑戦してみたいテーマや使ってみたい素材などがあれば教えてください。
 将来的には、世界のいろいろな国の、そこにある材料で切り紙を作り、旅をしながら個展を開催してみたいです。素材としては、銅や錫などの金属や陶器など、自分ひとりではつくれないものを、他の人と一緒にコラボレーションして何かをつくりだすということも、少しずつやっていきたいと思っています。


今までの作品のうち、特に気に入っているものや思い入れのある作品などがあれば、作品にまつわるエピソードも一緒に、教えていただけますか?
 一つ一つの作品を大事にしていきたいですし、作っているなかでこれは良くできた、と思うものもあります。
けれど、大学の時に作った初期の作品は、一生ものだなと思っています。
 社会に出る前に、就職するか切り紙作家として歩むか足踏みしていた私を家族も心配していましたが、卒業制作で制作した切り紙を用いたテーブルを見て、家族も納得して背中を押してくれ、切り紙作家としてスタートしました。現在はその作品たちは実家に眠っていますが、自分の制作活動のスタートである大切な作品たちです。


クレコは、クリエイター同士やクリエイターとファンなど、人と人、人とクリエイティブ作品とのつながりをサポートするサイトとして生まれました。個展などで、様々な人々と製作を通じて関わる機会があると思いますが、日々の活動のなかで、「つながり」が大切だと思うことがありましたらお聞かせください。
 やはり、家族や友達など、身近な人とのつながりが一番大事ですね。今まで続けてこれたのも、家族をはじめ、「がんばれがんばれ」といってくださった周りの方達がいたからこそだと、心から感謝しています。自分のバックグラウンドは作品にも大きく影響するので、そういうゆるぎないあたたかさは、これからも大事にしていきたいです。また、知り合った人とは、なるべく長く付き合いたいと思っています。周りの人が、制作活動へさまざまなヒントをくれたり、何かを気づかせてくれる一言を言ってくれたり、助けられることもあります。



ワークショップなども開催されているようですが、今後の活動予定・告知などがありましたら、お聞かせください。
 2008年1月18日(金)~30日(水)に三軒茶屋のキャロットタワーにて個展を開催します。期間中の26日・27日には1日完結のワークショップも行います。
 モノを作る、手を動かすという作業をしたことがない人も、生活の潤いや気分転換になればいいな、と思っています。昔はワークショップを開催しても、参加者が一人だけのこともありましたが、今ではいろいろな人が参加しています。私自身、かなり自由に教えていて、どうしても手が動かない人にはヒントを与えて、自分でなるべくやってもらうようにしています。皆さん、自分でつくったものはやはりかわいいようですね。
 モノが溢れている現在の世の中で、私のようにモノづくりをして生きている人が存在してもいいかなって思っています。今後も、自分の手で作ったものを伝えていきたいです。


矢口さん、お忙しい中、色々とお答えくださってありがとうございました。これからも、人を笑顔にさせるような作品を作り続けてください。今後の切り紙の新しい世界も楽しみにしています。
interviewer:クレコ編集部

→ Back number
 
VOL.1 さかてしんこさん 絵本作家/イラストレーター
 VOL.2 武田厚志さん アートディレクター
 VOL.3 坂口知香さん セラミックアーティスト/ペインター
 VOL.4 風間純一郎さん 木工家


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