第12回は、独特な世界観を様々な手法で表現されている、漫画家、銅版画家でもある、
杉山実さんにお話をうかがいました!


Creator Information
NAME : 杉山実(すぎやまみのる)
OFFICIAL SITE : MINORULAND[ミノルランド]
杉山 実 個展 「武装デパート」   場所:ビリケンギャラリー  日時:2009.9.4.(金)~9.16.(水)



銅版画では独創的な世界観、また「四コマ戦士 パパ戦記」では身近なことをユーモラスに描かれている杉山実さん。現在に至る経緯と、現在の主な活動をご紹介ください。
 「火の鳥」や「ゲゲゲの鬼太郎」「鉄人28号」「デビルマン」など昔の漫画が好きで子供の頃から漫画家になろうと思っていました。高校の時、現実的な進路の選択を迫られ漫画家になりたいと言ったら親にとりあえず何でも良いから大学に行ってくれと言われ、ならばと思い美術大学の受験を目指しました。しかし美術的なトレーニングを全くしていなかったので当時志望していたデザイン学科は全て落ちてしまい、結局多摩美術大学の版画科だけに合格し、版画科に行くことになりました。
 初め版画と言えば木版画のイメージしかなく絶望的な気持ちになったのですが、銅版画の腐食技法であるエッチングに出会い、この技法が僕の表現したいことにビッタリで、そこからは夢中になって作品を作りました。それと同時に漫画の夢もあきらめず大学では版画、家では漫画といった日々を過ごしました。卒業後はゲーム会社でバイトをしながら漫画やその他の表現を探っていたのですが、大学から助手のお誘いがあり4年間版画研究室で助手をしながら再び版画と漫画の日々に。その間に『マザーコスモス』という漫画本を出版しました。現在は大学助手を任期満了で退職しフリーのクリエイターとして幅広く活動しています。
 現在の主な活動 漫画(漫画誌アックスにてガールデバイス連載中) キャラクターデザイン(今年1月~2月ハンガリーにてアニメーション映画のキャラクターデザインをしてきました) ●ショートアニメーション制作(ソフトさんの悲劇が世界4第映画祭ロカルノ映画祭(スイス)で上映されました) ●フィギュアデザイン・制作(パボラスという怪獣ソフビのデザインをしました) ●絵画(9月4日より個展を開催します)4コマブログ(11月に「パパ戦記」が書籍化される予定です)などです。




 




制作活動が軌道に乗るまでに、努力した点や、苦労した事がありましたらお聞かせください。
 正直まだまだ軌道に乗っていないのですが、心がけている事は、思いついた事は実行する、作品のコンセプトが一番マッチする表現媒体を使う、作り始めた作品は必ず完成させる、コンテストに出し続ける、頂いた仕事は断らない、といったところです。
 好きな事をやっているので制作に対して努力や苦労はないのですが作品が社会的に評価されるようにするための活動という方が大変です、元々売り込みが苦手で飛び込みで持ち込みとかは出来ないので最低限コンテストへの応募とそこから生まれた関係は大切にしようと思っています。

過去に自分の技術が成長したと思われる、お仕事や、技術取得方法があったら教えてください。
 銅版画で言えばとても手間のかかる技法なので最初はなるだけ効率的な方法を模索していたのですが上手く行かなくて、ある時自分にはそういう器用さは無い事に気付き、最も初歩的で手間のかかる方法でコツコツ制作しました。するととても良い作品が作れました、それ以降下手な小細工はせずに一番ストレートな方法で作品を作るようにしています。
 また今年1月から2月にかけて初めて海外で6週間仕事をしてきたのですが、その仕事は5人のチームでアニメーション映画のキャラクターデザインをするという物でした。ハンガリー人3人と僕とメキシコ人だったのですがそれぞれ唖然とするほどデザインに対する感性が違っていて驚きました。改めて価値観について考えさせられる良い経験でした、本当に世界は広いです。



「ソフトさんの悲劇」などのアニメーションも手がけていらっしゃる杉山さんですが、誰も見たことのない独特な世界観を作る時の発想の元は何ですか。 また、感化された作品やアーティストの方はいらっしゃいますか。 
 「独特の世界観」ですがやはり過去に影響を受けた色々な物が混ざって出来た物です。僕自身はミキサーのような物ですからなるだけ良い物、面白い物、逆につまらない物、よく分からない物など幅広く素材を入れないといけないと思っています。そしてそのようにして出てきた物を認めてあげるようにしています。
 「ソフトさん」はほとんど閃きです、閃きはいつおきるか分からないので特に大切にしています。閃いたらどんなに馬鹿馬鹿しくても作品にしましょう、きっとそれは正解です。
 影響を受けた物は沢山あります「火の鳥」などの昔の漫画やガンダムやラピュタといったアニメ、ドラクエ等のゲームです、あと小説も好きですフィリップKディックとかスティーブンキング等は浪人生の頃に相当ハマっていました。とにかくロボットが好きで子供の頃はロボットのエンジニアになりたいと思っていました。

「ソフトさんの悲劇」YouTube版

 





銅版画制作をするにあたり、通常どのような環境で、制作活動をおこなっているのですか。 簡単でかまいませんので、制作手順・制作時間などもあわせて教えてください。
 銅版画というのは信じられないくらい手間のかかる技法です、まず必ず必要になるのがプレス機という機械です、それと腐食技法をする場合は腐食槽、有機溶剤もたくさん使います、つまり専用の工房が必要になります。僕の場合は普段は自宅で制作活動していてますが銅版画に関しては子供がいるので家では無理です。幸い大学で4年助手をさせて頂いたので必要な時は先生にお願いして大学の工房を貸してもらっています。
 制作手順ですが僕のやっているエッチング技法についてざっと説明します。
 まず銅版を用意します、そこにグランドという防食用のニスを塗ります、グランドが渇いたらニードルという針が付いた鉛筆のような物で描画してグランドをはがします。ある程度描画出来たら版を腐食液(塩化第二鉄や硝酸)に浸けます、すると描画した部分の銅が溶けて凹みます。ほどほどに凹んだら版を取り出して水で洗いまた描画します。これを何度も繰り返して絵の密度を上げます、最初引いた線が最終的に一番太い線になるのでその辺りも考慮して描画するのがポイントです。描画と腐食が終わったらグランドを有機溶剤(灯油やガソリン)ではがします、そして版にインクを詰めて版面を布で拭き取ります(銅版用のインクはペースト状なのです)。すると腐食で凹んだ部分にだけインクが残ります、ふき上げた版をプレス機の上にのせて紙をかぶせてプレス機に通します(凹版専用のプレス機です)。するとインクが紙に移って絵になります、描画が不十分な場合またグランドを塗って描画します。これを絵が完成するまで何度も繰り返します。
 制作期間は大きい作品(B1)で2ヶ月ぐらい小さい作品(B5)で2週間ぐらいです。

 




今まで制作したものの中で、特に気に入っているものを一つ選んでいただき、それについてのコンセプトやこだわった部分などを教えてください。 
 僕はロボットが好きで「ガンプラ」も大好きでした。子どもの頃はプラモデルを毎日作っていました、そしていつかフルスクラッチ(完全に材料からプラモデルを自作すること)でオリジナルのロボット作ろうと夢想していたのですが小学生の工作技術ではとても無理で何度も挫折していました。そして大人になってその思いを遂げようと「あかたも販売しているようにロボットのプラモデルをもしたオリジナルのフィギュアを作る」というコンセプトで作品を作りました。これは個人的にとても楽しかったです。
 ちゃんとパッケージも作りましたし、ボックスアート(箱の絵)もノリノリで制作し、立体には皮や銅板を加工した物を貼り付けたりして工芸品を作っているようで楽しかったです、設定も細かく考えて、展示をした時に「これは何処で売っているのですか?」など聞かれた時は本当に嬉しかったです。

今後、挑戦してみたい仕事や、つくってみたい作品があったら教えてください。
 しっかり作り込んだアニメーションを制作したいです。
 あと世界観にこだわった少年漫画を描きたい、それとゲームなどのキャラクターデザインもやってみたいです。

 





クレコは、クリエイター同士やクリエイターとファンなど、人と人、人とクリエイティブ作品とのつながりをサポートするサイトとして生まれました。杉山さんの日々の活動のなかで、「つながり」が大切だと思うことがありましたらお聞かせください。
 最近は繋がりを実感することが多いです。僕を支えてくれる家族はその最たる例ですが、夢を共有する仲間、展示を手伝ってくれる友人、作品を見てくれる人、仕事で僕を選んでくれる人、全て繋がりから生まれて来ます。たとえ一つの作品を完全に一人で制作したとしてもその作品も繋がりから生まれて来ているのだと実感します。
 最近こんな事がありました、随分前に、ある公募に作品を出したのですが結局落選してしまって、僕は出した事も忘れていたのですがある時仕事を頂いて、その人が僕の落選した作品を憶えていてくれて仕事を回してくれたそうです。
 落選したことさえも意味があるのだなと思いました。

 

 

今後の活動予定・告知などがありましたら、お聞かせください。

●9月4日からビリケンギャラリーにて個展をします
展示タイトル「武装デパート」2009年9月4日(金)~9月16日(水)
作家来廊予定 … 4日(17時~),6日(13時~),13日(13時~),16日(15時~)
ビリケンギャラリー  OPEN12:00~19:00【月曜休み】
〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101
TEL.03-3400-2214 FAX.03-3400-2478
地下鉄表参道駅B1出口より7分

●ボクラノSFシリーズ第4弾小松左京短編集「すぺるむ・さぴえんすの冒険」
 〈福音館書店〉で挿絵と表紙を担当しました(11月末発売予定)

●ブログ「4コマ戦士パパ戦記」が 書籍化されます〈赤ちゃんとママ社〉
 
2冊同時発売(11月末発売予定)



杉山さん、個展準備のお忙しい中、色々とお答えくださってありがとうございました。これからも、様々な表現の場でのご活躍を楽しみにしています!
interviewer:クレコ編集部


→ Back number
 
VOL.1 さかてしんこさん 絵本作家/イラストレーター
 VOL.2 武田厚志さん アートディレクター
 VOL.3 坂口知香さん セラミックアーティスト/ペインター
 VOL.4 風間純一郎さん 木工家
 VOL.5 矢口加奈子さん 切り紙作家
 VOL.6 細貝里枝さん バルーンアーティスト
 VOL.7 カラットさん 服飾雑貨クリエイター
 VOL.8 大橋保彦さん 手作り戦車
 VOL.9 トヨクラタケルさん イラストレーター
 VOL.10 野嶋孝介さん 靴作家
 VOL.11 中原麻紀子さん 手作り石けん作家


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